早期審査の概要
商標登録出願の早期審査制度は、出願人又はその代理人の申請により、商標登録出願の審査を通常よりも早期に開始させ、商標権の早期取得を可能にする制度です。
本制度は、模倣・侵害事件が生じている商標登録出願の早期権利化のニーズや経済活動のグローバル化に応えるため、平成9年 (1997年) に導入され、それ以降も運用面の見直しが行われています。
平成29年 (2017年) 2月には、商標早期審査・早期審理ガイドラインが改訂され、マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願 (マドプロ出願) を予定している商標登録出願や、商標法施行規則別表等に掲載されている商品又は役務 (以下、例示掲載商品という) のみを指定した商標登録出願についても早期審査の申請ができるようになりました。
そこで、商標登録出願について早期審査を受けるための要件及び手続について、簡単ですが、ご説明をさせていただきます。
早期審査を受けるための要件
早期審査を受けるためには、次のいずれかに該当する商標登録出願である必要があります。
※ただし、新しいタイプの商標 (動き商標・ホログラム商標・色彩のみからなる商標・音商標及び位置商標) に係る商標登録出願については早期審査を受けられません。
- 1. 商標登録出願人又は商標登録出願人から出願商標の使用許諾を受けた者 (以下、「ライセンシー」という) がその出願商標を指定商品 (指定役務) について既に使用し (*1) 、又は使用準備を相当程度進めていて (*2,*3) 、かつ、次のいずれかに該当する商標登録出願 (以下、「権利化について緊急性を要する出願」という)
- (1) 出願人及びライセンシー以外の者 (以下、「第三者」という) が許諾なく、出願商標若しくはこれに類似する商標を、出願人若しくはライセンシーの使用若しくは使用準備に係る指定商品 (指定役務) 若しくはこれらに類似する商品 (役務) に使用していること又は使用準備 (*4) を相当程度進めていることが明らかな場合
- (2) 出願商標の使用について第三者から警告を受けている場合
- (3) 出願商標について、第三者から使用許諾を求められている場合
- (4) 出願商標について、出願人が日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願している場合
- (5) 出願商標について、出願人がマドリッド協定議定書に基づく国際登録出願 (マドプロ出願) の基礎出願とする場合
- 2. 商標登録出願人又はライセンシーがその出願商標を既に使用している商品 (役務) 又は使用準備を相当程度進めている商品 (役務) のみを指定している商標登録出願 (*5)
- 3. 商標登録出願人又はライセンシーが出願商標を指定商品 (指定役務) に既に使用し、又は使用準備を相当程度進めていて、かつ、商標法施行規則別表や類似商品・役務審査基準等に掲載されている商品 (役務) のみを指定している商標登録出願 (*5)
*1 商標の使用とは、商標法第2条第3項に規定する行為をいいます。
*2 商標の使用準備をしているというためには、少なくとも早期審査の申請から3月以内の使用開始予定があることが必要です。
*3 複数の商品 (役務) を指定しているときは、そのいずれかの商品 (役務) について使用又は使用準備を相当程度進めていることを証明すれば、「出願商標を指定商品 (指定役務) に既に使用していること又は使用準備を相当程度進めている」の要件を満たすこととなります。
*4 第三者による「使用の準備」とは、例えば、譲渡の目的をもって、指定商品に、出願商標に類似する商標を付したものを所持する行為等、商標法第37条第2号乃至第8号に掲げる行為に相当するものをいいます。
*5 要件2及び3における早期審査の対象となる指定商品 (指定役務) は、申請時に出願商標の使用状況等を証明する資料や物件を提出することにより出願商標の使用等が確認できる商品 (役務) のみです。したがって、願書に記載されている指定商品 (指定役務) のうち、資料や物件により出願商標の使用等が確認できない商品 (役務) については、申請前 (申請と同時も可) に削除補正するか、又は指定商品 (指定役務) ごとに出願を分割する必要があります。
早期審査を受けるための手続
早期審査を受けるためには、商標登録出願をするだけではなく、「早期審査に関する事情説明書」に次の1から3のいずれかの証明書類を添付して申請をする必要があります。
※早期審査をご希望の方は、当事務所の弁理士宛に必要な証明書類をご送付ください。
1. 緊急性を要する状況を証明する書類
- (1) 第三者が許諾なく、出願商標又はこれに類似する商標を、出願人若しくはライセンシーの使用若しくは使用準備に係る指定商品 (指定役務) 若しくはこれらに類似する商品 (役務) について使用していること又は使用準備を相当程度進めていることが明らかな場合は、その使用事実を証明する書類として、次のようなものが必要になります。
- a. 商標が付された商品を撮影した写真
- b. 商標が付された商品が掲載されたパンフレット 又は カタログ
- c. 商標が付された商品が掲載された広告
- d. 商標が付された役務の提供の用に供する物を撮影した写真
- e. 商標が掲載された役務に関するパンフレット 又は カタログ
- f. 商標が掲載された役務に関する広告
- (2) 出願商標の使用について第三者から警告を受けている場合は、警告書 (写し)
- (3) 出願商標について第三者から使用許諾を求められている場合は、使用許諾を求められていることを示す書面 (写し) 等
- (4) 出願商標について、出願人が日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へ出願している場合は、その出願の写し
※出願人が日本国特許庁への出願を基礎としてマドリッド協定議定書に基づく国際登録出願を既に行っている場合は、その出願の写し (受領印のあるもの)
2. 商標の使用の事実を証明する書類
出願人又はライセンシーが商標を商品 (役務) について使用していることを証明するための書類として、次のようなものが必要になります。
- (1) 商標が付された商品を撮影した写真
- (2) 商標が付された商品が掲載されたパンフレット 又は カタログ
- (3) 商標が付された商品が掲載された広告
- (4) 商標が付された役務の提供の用に供する物を撮影した写真
- (5) 商標が掲載された役務に関するパンフレット 又は カタログ
- (6) 商標が掲載された役務に関する広告
3. 商標の使用準備の事実を証明する書類
商標の使用準備が相当程度進んでいることを証明するための書類として、次のようなものが必要になります。
- (1) 商標が付された商品が掲載されたパンフレット、カタログ等の印刷についてその受発注を示す資料
- (2) 商標が付された商品が掲載された広告についてその受発注を示す資料
- (3) 商標が付された商品の販売に関するプレス発表や新聞記事等の資料
- (4) 商標が付された役務の提供の用に供する物の受発注を示す資料
- (5) 商標が掲載された役務に関するパンフレット、カタログ等の印刷についてその受発注を示す資料
- (6) 商標が掲載された役務に関する広告についてその受発注を示す資料 (*6)
- (7) 商標が掲載された役務の提供に関するプレス発表や新聞記事等の資料
*6 受発注を示す資料は、発注したことを示す資料及びこれが受注されたことを示す資料の双方が必要になります。
お問合せ
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