実用新案法は、「考案とは自然法則を利用した技術的思想の創作をいう」(実用新案法2条1項)と定義し、「産業上利用することができる考案であって物品の形状、構造又は組合せに係るもの」(同法3条1項)について、所定の基礎的要件を具備している場合に実用新案登録を受けることができるものとし、考案について、その前提とする技術的課題、その課題を解決するための物品の形状、構造又は組合せに係る技術的手段の構成、その構成がもたらす作用効果等、技術的な観点で有用な意義を持ったものであることを要求しています。
この点では、実用新案法上の考案は、その自然法則を利用した技術的手段の構成により一定の作用効果を有するものでなければならないことになりますが、それは、その考案が利用されるべき産業分野における一定の技術的課題を解決する技術的効果を意味するものと解せられます。(昭46(ヨ)2)
また、実用新案法上の考案というには、技術的思想の創作が自然法則を利用したことにより一定の効果を反覆継続して得ることができるものであれば十分であり、考案者において技術的手段とそれがもたらす作用効果との間の因果関係や理論的関連性につき科学的認識を欠き、又は誤った認識をもったとしても、そのことによってその考案性が否定されるものではありません。(昭58(行ケ)183)
しかし、技術的思想の創作であったとしても、その思想が、専ら、人間の精神的活動を介在させた原理や法則、社会科学上の原理や法則、人為的な取り決めを利用したものにすぎない場合には、自然法則を利用した創作には該当しないため、実用新案法上の考案には該当しないことになります。(平14(ワ)5502)
特許法は、発明について「自然法則を利用した技術的思想の創作であって高度のものをいう」(特許法2条1項)と定義しているのに対し、実用新案法は、考案について「自然法則を利用した技術的思想の創作をいう」と定義しています(実用新案法2条1項)。
これは、実用新案法が、物品の形状、構造又は組合せに係る外形的考案、換言すれば製品自体のうちに空間的に表現することができる考案の保護に重点をおいたものであることから、発明との違いを明確にするために「高度のもの」という文言が除外されていると思われます。
特許法は、「産業上利用することができる発明」(特許法29条1項)と規定し、物の発明、方法の発明及び製造方法の発明(同法2条3項)を想定し、特許の対象を物品の形状、構造又は組合せに係るものに限定していないのに対し、実用新案法は、「産業上利用することができる考案であって物品の形状、構造又は組合せに係るもの」(実用新案法3条1項)のみを登録の対象としています。
これは、旧実用新案法において、物品の形状、構造又は組合せに関する新規の工業的新案を保護の対象とし、物品の形状、構造又は組合せを実現するための方法、順序のいかん(製作方法ないし工程)は保護の対象外とされていたこと、また、旧特許法でいう、新規の工業的発明とも区別されていたこと等が、現行法においても引き継がれているためと思われます。
実用新案登録出願においては図面の提出が必須であるのに対し(実用新案法5条2項)、特許出願においては必須ではありません(特許法36条2項)。
これは、特許法は、化合物等のように図面によって表現することが適切でないものをも特許の対象としているのに対し、実用新案法は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案のみを登録の対象としているからです。(平12(行ケ)333)
実用新案法では、物品の形状、構造又は組合せに係る考案のみが保護の対象であり、物品の製造方法は保護の対象ではありません。
したがって、実用新案登録出願の出願人が実用新案登録請求の範囲に、物品の形状、構造等の外形的、機械的な構成を端的に記載しないで、その物品の形状等を実現するための製造方法を織り込んで記載することがあったとしても、その考案の技術的範囲を確定するに当たっては、当該製造方法の相違を考慮の中に入れることは許されません。(参考 最高裁昭56年6月30日第三小法廷判決)
しかし、考案の技術的範囲を確定するに当たって、製造方法の記載を構成要件から一切除外するとすれば、実用新案法26条で準用する特許法70条の規定に反するばかりか、かえって実用新案権者に対しその者自身が期待した以上の広い保護を与え、反面この記載を要件として信じた当業者に対し予期しない不利益を与えるという不合理な結果となることから、製造方法の記載がある場合には、物品の最終的な形状等を特定するための要件として考慮すべきといえます。(平1(ワ)1987)
また、このことは、実用新案登録請求の範囲に製造方法の記載がある場合に当該製造方法に限定して考案の技術的範囲を判断すべきということではなく、製造方法が異なっても物品の最終的な形状等が同一のものもその考案の技術的範囲に含まれ得るという意味であると理解できます。
用途考案とは、もともと考案性のない物をその物にとって新しい用途に条件を付して利用することについての考案のことです。(昭58(ネ)1101)
用途考案はその物の新しい用途の発見に基づくものであり、その物を新しい用途に転用するにあたり技術的に付される条件を抜きにしてその考案の技術的範囲を考えることはできないため、その物をどのような技術的条件のもとに転用するのかという限定が付されたものになります。
考案は自然法則を利用した技術的思想の創作である点で発明と共通するので、考案が物の発明についての特許権と抵触することがありえます。
しかし、考案は物品の形状、構造又は組合せに係るもののみであり、方法や製造方法は考案たり得ないので、考案が方法又は製造方法の発明についての特許権と抵触することはありません。
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