意匠登録の対象となる意匠は、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であることから、機器自体の立体的又は平面的形状等のデザインでなければならないという印象が強いかもしれません。
しかし、近年は高度な情報処理機能を備える電子機器の普及に伴い、マンマシンインターフェースも変化し、液晶ディスプレイ等に表示された画面を見ながらボタン操作をして機能を選択し、実行するものが一般的になってきました。
そのため、電子機器の液晶ディスプレイ等に表示される画面デザイン/画像の意匠についても、一定の要件を満たせば、部分意匠として意匠登録の対象とされるようになりました。
また、近年の電子機器の高性能化が進み、パソコン、携帯電話機、スマートフォン等では、ソフトやアプリをインストールして機能を追加していく利用方法が広く用いられていることが考慮され、平成28年4月からは、機器にインストールされた付加機能の操作に必要な画面デザイン/画像についても、一定の要件を満たせば、部分意匠として意匠登録の対象とされることになりました。
もっとも、電子機器の画面デザイン/画像はマンマシンインターフェースとしての役割を果たすものであり、その電子機器の機能と結合していることから、その機能の技術的アイデアについては特許出願をし、その画面デザイン/画像の意匠については意匠登録出願するということも可能です。
電子機器等に表示される画面デザイン/画像が意匠登録の対象となる意匠を構成するためには、次のいずれかに該当するものでなければなりません。
例えば、次のa又はbのようなものです。
例えば、次のc又はdのようなものです。
意匠登録の対象とならない画面デザイン/画像は、次のようなものです。
事例1 従来型携帯電話機の液晶表示部に表示される画像
【登録番号】意匠登録1430548号 | |
【登録日】2011.11.25 | |
【意匠に係る物品】携帯電話機 | |
【部分意匠】 | |
【意匠権者】ソフトバンクモバイル株式会社 | |
【意匠の説明】赤色の一点鎖線で囲われた部分が部分意匠として登録を受けようとする部分である。登録を受けようとする部分は携帯電話機の通話、メールなどの各種機能を選択するための画面である。キー操作によって移動する選択枠で囲われたアイコンにおいて、下方に表示された機能を示す文字が拡大して表示される。意匠登録を受けようとする画像部分の変化した状態の拡大図1,2,3に示すように、いずれのアイコン説明文字もアイコンが選択されることにより拡大して表示される。なお、電源スイッチを投入したときに何れのアイコンが拡大表示されるかに決まりはない。 | |
【図面】(一部省略) | |
【正面図】 |
【意匠登録を受けようとする画像部分の拡大図】 【意匠登録を受けようとする画像部分の変化した状態の拡大図1】 |
事例2 スマートフォンの液晶表示部に表示される画像
【登録番号】意匠登録1458824号 | ||
【登録日】2012.11.30 | ||
【意匠に係る物品】携帯電話機 | ||
【部分意匠】 | ||
【意匠権者】シャープ株式会社 | ||
【意匠に係る物品の説明】本物品は、タッチパネル式の液晶表示部を有する携帯電話機である。第1正面図に表された画像は、スクリーンロックを解除するために用いられる画像であり、第2正面図及び第3正面図は、ロック解除と同時に新たなアイコンが表われ、物品の有する複数の機能の中から一の機能を選択するための操作に用いられるメニューアイコンである。 | ||
【意匠の説明】実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図及び底面図、左側面図は意匠登録を受けようとする部分が表れないため省略する。第1正面図はキーロックされている状態の画面であり、画面上の錠アイコンを指で下方向に滑らすことによりロック解除され、第2正面図及び第3正面図のように、時計表示の画像が下がるとともに、アイコンが配列された画像が上方向にスライドしながら表示される。 | ||
【図面】(一部省略) | ||
【第1正面図】 |
【第2正面図】 |
【第3正面図】 |
事例3 スマートフォンの液晶表示部に表示される画像
【登録番号】意匠登録1474519号 | |
【登録日】2013.6.14 | |
【意匠に係る物品】携帯情報端末 | |
【部分意匠】 | |
【意匠権者】アップル インコーポレイテッド | |
【意匠に係る物品の説明】正面図の表示部拡大図に表された画像は、ボタンをクリックすることによって、本件意匠の物品「携帯情報端末」が有する機能の中の、例えば、使用者のタスク要求の話しことばを認識し、そのタスクを行う機能を発揮する。 | |
【意匠の説明】実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図、右側面図及び底面図は意匠登録を受けようとする部分が表れないため省略する。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。 | |
【図面】(一部省略) | |
【正面図】 |
【アイコンのみの拡大図】 |
事例4 エレベーター用表示器に表示される画像
【登録番号】意匠登録1546008号 | ||
【登録日】2016.2.19 | ||
【意匠に係る物品】エレベーター用表示器 | ||
【部分意匠】 | ||
【意匠権者】三菱電機株式会社 | ||
【意匠に係る物品の説明】本物品は、エレベーター用表示器である。正面図に表された画像は、エレベーター用表示器の成立性に照らして不可欠なものである。かつその画像は、エレベーター用表示器の有する表示機能により表示されているものである。この画像は、正面図に示されているように、エレベーターの進行方向と、現在位置階数を表示するための画像となっている。また、その変化する態様は「変化した状態を示す正面図」からも推測できるように、特定された範囲内のものであることを示している。これらの画像は、エレベーターの進行方向が反転する時に、進行方向を示す図形形状が連続的に変化しながら表示されるものである。 | ||
【意匠の説明】実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図は、意匠登録を受けようとする部分が表れないため省略する。底面図は平面図と、左側面図は右側面図とそれぞれ対称に表されるため、底面図および左側面図は省略する。 | ||
【図面】(一部省略) | ||
【正面図】 |
【変化した状態を示す正面図2】 |
【変化した状態を示す正面図3】 |
【変化した状態を示す正面図4】 |
【変化した状態を示す正面図5】 |
【変化した状態を示す正面図6】 |
【変化した状態を示す正面図7】 |
事例5 設備の稼動状況等を表示する画像
【登録番号】意匠登録1546387号 | |
【登録日】2016.2.19 | |
【意匠に係る物品】水処理装置用監視情報表示器 | |
【部分意匠】 | |
【意匠権者】栗田工業株式会社、株式会社東芝 | |
【意匠に係る物品の説明】本物品は水処理設備を構成する機器の稼働状態や水質維持、管理に関わる作業全般を監視、予測される状況を事前に検知するために必要な情報を考慮しながら作業を行うための監視情報表示器である。各部の名称を示す参考図に示されるように、監視者に分かりやすいように、稼働状況、予測情報、必要な作業等の状況の具体的な図が表示される。重要指標表示部の顔のアイコンは指標のレベルによって状況を3種類の顔の表情で表示させており、変化した状態を示す正面図に示されるように、指標のレベルの変化によって連続して顔の表情も変化するものである。 | |
【意匠の説明】実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図及び底面図は意匠登録を受けようとする部分が表れないため省略する。左側面図は右側面図と対称につき省略する。 | |
【図面】(一部省略) | |
【正面図】 【変化した状態を示す正面図1】 【変化した状態を示す正面図2】 |
事例6 デジタルビデオディスクレコーダーと同時に使用されるテレビジョン受像機に表示される操作用画像
【登録番号】意匠登録1546387号 | |
【登録日】2012.4.27 | |
【意匠に係る物品】デジタルビデオディスクレコーダー | |
【部分意匠】 | |
【意匠権者】パナソニック株式会社 | |
【意匠に係る物品の説明】「画像図」に表された画像は、複数の機能からなる初期メニューをリスト状に配したものである。当該画像はデジタルビデオディスクレコーダーから、テレビジョン受像機に表示され、別体のリモコンによる操作により、画像上の9個の矩形で表現された項目を表示して選択する。当該画像の左右には「変化した状態を示す画像図1」及び「変化した状態を示す画像図2」に表された画像が存在し、その存在を使用者に認識し易くするため、「変化した状態を示す画像図1」及び「変化した状態を示す画像図2」の一部である端の3個の矩形を当該画像において表示している。また、各画像図の下方に表された3個の矩形は現在の画像の位置を表しており、各画像図に表された矢印状の表示と相俟って、現在位置から左右いずれの画像に移動可能かを明示的に表している。 | |
【意匠の説明】実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。 | |
【図面】(一部省略) | |
【画像図】 【変化した状態を示す画像図1】 【変化した状態を示す画像図2】 |
【正面図】 【斜視図】 |
事例7 内視鏡用制御器と同時に使用されるモニタに表示される設定用画像
【登録番号】意匠登録1382312号 | |
【登録日】2010.2.12 | |
【意匠に係る物品】内視鏡用制御機 | |
【部分意匠】 | |
【意匠権者】富士フイルム株式会社 | |
【意匠に係る物品の説明】本物品には、ユニバーサルコードを介して内視鏡が接続され、また、コードを介してキーボードとモニタとが接続される。画像図に示す画像は、内視鏡検査の前、又は検査中に、例えば、表示設定、スコープ設定、システム設定、ネットワーク設定、及び、周辺機器設定等をするための画像である。大別した設定項目が、第1階層表示部に表示される。キーボードの左・右矢印キーを操作して選択枠を左右に移動して第1階層の設定項目を選択する。第1階層の設定項目を選択した後に、キーボードの上・下矢印キーを操作して第2階層表示部に表示されている設定項目を選択する。設定項目を確認した後に、設定終了ボタンを押すことで、設定項目が登録され、各設定項目の下で内視鏡検査が実行される。 | |
【意匠の説明】実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。操作部等を説明する参考図は、画像の各部の用途及び機能を説明するための図である。 | |
【図面】(一部省略) | |
【画像図】 |
【正面図】 |
事例8 車両試験装置用制御機と同時に使用される表示機に表示される操作用画像
【登録番号】意匠登録1442276号 | |
【登録日】2012.4.27 | |
【意匠に係る物品】車両試験装置用制御機 | |
【部分意匠】 | |
【意匠権者】株式会社明電舎 | |
【意匠に係る物品の説明】本物品は、自動車などの車両テストを行う車両試験装置(動力計、ローラ、冷却ファン、操作盤など)において、動力計単体あるいは動力計と車両の機械損失を安定化させるために一定速で暖機運転し、安定状態になったか否かの判定をおこなう車両試験装置用制御機に関する。本物品の使用に際しては別機械の動力計と図示省略のケーブルを介して本物品と接続する。画像図に表した画像は、本物品と同時に使用される表示機に表示される操作用の画像を表している。この画像は、本物品において前記暖機運転の機能を発揮できる状態にする画像に関する。この画像は、操作表示部を説明する参考図に示すように、暖機運転の状況を選択・入力の操作により設定する運転状況設定部と、開始ボタンの操作により運転状況設定部の設定に基づく制動力を運転状況のトレンドとしてグラフ表示する運転状況表示部とが配置されている。運転状況設定部には、動力計からの駆動(自動運転)あるいは車両の運転(手動運転)による駆動を選択する選択ボタンと、暖機時間(min)の数値を入力する入力部(a)と、車速(km/h)の数値を入力する入力部(b)と、暖機により安定状態になったか否かの基準値(N)を入力操作する入力部(c)とを有している。この運転状況設定部の下側には、開始ボタンの操作によって暖機運転を開始したときに、その運転進捗状況を表示する進捗表示部が配置されている。なお、開始ボタンと所定の間隔をおいて暖機運転を停止させる停止ボタンが配置されている。運転状況表示部は、暖機運転の車速を示す車速モニタと、制動力を示す制動モニタと、暖機の残り時間を表示する時間表示部と、暖機が完了したかを判定表示する表示部(A)と、暖機により制動力が安定したかを示す表示部(B)とを有している。終了ボタンは操作の終了に用いられる。使用状態参考図は、動力計からの駆動を選択して時速60km/hの車速で60min間の設定で暖機運転したときの判定結果(安定判定基準値=5N)の画像を表示している。 | |
【意匠の説明】実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。 | |
【図面】(一部省略) | |
【画像図】 |
【正面図】 【斜視図】 |
事例9 プロジェクター用スクリーンに投射される操作用画像
【登録番号】意匠登録1353068号 | |
【登録日】2009.2.6 | |
【意匠に係る物品】プロジェクター | |
【部分意匠】 | |
【意匠権者】NECディスプレイソリューションズ株式会社 | |
【意匠に係る物品の説明】本物品はプロジェクターであって、画像をスクリーン等外部の表示機器に投写等して表示するものである。「画像図」に表した画像は、本物品と同時に使用される表示機器に表示される操作用の画像を表すものである。「画像図」は、投写等される画像及び本物品の各種調整を行うための機能を発揮できる状態にするための画像であって、スクリーン等の表示機器に表示された画面の明るさや、コントラスト、色相の調整等、各種操作を行うものである。「画像図」は、少なくとも第1階層、第2階層、第3階層を有し、種々の機能選択が可能となっており、最上段左側から、「SOURCE」、「ADJUST」、「SETUP」等が一行に配された第1階層、第1階層の下方左側から、「PICTURE」、「IMAGE OPTIONS」等が一行に配された第2階層、第2階層下方左側から、「PRESET」、「DETAIL SETTINGS」、「CONTRAST」等が配されている第3階層で構成されている。また、第3階層には、右側上方に「HIGH BRIGHT」の文字が配され、その下方には横長形状の調整バーが5段構成されている。さらに第3階層の下方には左側から、「ENTER:SELECT」等が配されている。また、「画像図」に示すように、第1階層において「ADJUST」が選択された場合には、「ADJUST」の文字の周囲と第2階層の色彩が変化して、第1階層と第2階層とが選択されたことを示すものである。また、第1階層で「ADJUST」が選択されると、「変化した状態を示す画像図1」に示すように、第2階層での選択が可能となり、第2階層で「PICTURE」が選択されると「PICTURE」の文字の色彩が変化し、さらに第3階層の機能選択が可能となる。この第3階層で、いずれかの機能を選択する場合には、「変化した状態を示す画像図2」、「変化した状態を示す画像図3」及び「変化した状態を示す画像図4」に示すように、帯状のラインが「PRESET」から「RESET」までを上下動させることによって夫々の機能の選択をすることが可能である。 また、「CONTRAST」、「BRIGHTNESS」等の文字の右側に配された横長形状の調整バーを左右方向に動かすことによって、各種調整を行うことができる。 | |
【意匠の説明】実線で表した部分は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。 | |
【図面】(一部省略) | |
【画像図】 【変化した状態を示す画像図1】 【変化した状態を示す画像図2】 |
【正面図】 |
事例10 歩数計測データを表示する画像(参考:意匠審査基準)
【意匠に係る物品】歩数計機能付き電子計算機 | |
【部分意匠】 | |
【図面】 | |
【画像図】 |
事例11 アドレス帳からデータを入力し、宛名入力機能を発揮させるための画像(参考:意匠審査基準)
【意匠に係る物品】はがき作成機能付き電子計算機 | |
【部分意匠】 | |
【図面】 | |
【画像図】 |
事例12 切削加工内容の設定を行うための画像(参考:意匠審査基準)
【意匠に係る物品】マシニングセンタ制御機能付き電子計算機 | |
【部分意匠】 | |
【図面】 | |
【画像図】 |
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